この窓を飛び越えて…



―――「…い、こら斎藤!!」

「?!?!」



突然呼ばれた声にビックリして、“窓辺の人”から目を離し教室を見回した。

視界に入った原田くんが苦笑いで黒板の方を指差す。

見るとわたしを呼んだのは数学の先生で…


「お前…文化祭が近いからだって浮かれてんなよ?」


かなりご立腹の様子。

慌てて立ち上がり頭を下げた。


「…すいません…」

「シャキッとしてくれ実行委員!」

「え?ぁ、はい!」


自覚が足りなくて、しっかり返事ができなかった。

原田くんや綺歩ちゃんの笑い声を聞きながら、席に座る。

躊躇いながらも窓を見ると、“窓辺の人”も立って頭を下げてた。


「…窓ばっ……見…いでね?」

「…い」


風と教室の音に掻き消されて、ほとんど聞こえなかったけど必死に集めた言葉からはなんとなく想像ができた。



わたしと、一緒……



たぶん、“窓辺の人”も先生に怒られたのだろう。


自分と同じなんだと思うと笑みが零れる。

少しだけ、近づいた気がして……。




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