この窓を飛び越えて…



わたしの話を全て聞き終えた香葉。

その顔は恐ろしいほど清々しい笑顔だった。


「莉桜、話してくれてありがとう」

「なっ、何で?」


何で香葉にお礼を言われるのか分からなかった。


「話しにくかったでしょ?」


クスクスと笑いながらそう言う香葉。

それに対して私は何の言葉も出てこない。
――――香葉に言われたことが図星だったから…。


「でもさ、悩んでたんじゃない?」

「………」


喋らず首だけを縦で動かした。

“恋”をすること自体初めてなのに、先が見えないものなんてわたし一人じゃ絶対無理だった。

だけど、相談しづらいのが本音…。

それでもどうすればいいのか分からない気持ちが渦巻いてて…不安でしかなかった。


「莉桜…」


お母さんのような温もりを持つ声が耳を貫く。

泣きそうになるくらい…しみじみしている。


「香葉……」


香葉みたいな安心できる声は出せないけれど、わたしも親友の名前を大切に大切に口にした。

香葉は天使のような微笑みで、わたしの手を握る。


「今度からはさ、辛かったり、悩んだりしたことは相談して?」

「うん」

「それはすぐじゃなくてもいい。莉桜が話せる時にでいいから」

「うん」

「まぁ、早めに相談してくれたほうが早く楽になるよ」


少し怪しい笑みを浮かべて、香葉はわたしを見る。


「莉桜、一緒にその恋叶えようね」

「…香葉…」

「無理とか、思っちゃダメだから。まずは信じることから始めなきゃ、何も起こんないよ」



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