この窓を飛び越えて…
香葉は自分のことのように喋りだした。
「じゃあ学校を迷ってでも探さなきゃ!」
「えっ…?」
「えっ、じゃないよ莉桜!これはチャンスだよチャンス。神様がくれたんだよ!」
わたしから離れて豪語する香葉に、思わず身がたじろぐ。
チャンス……。
それは何となく分かるけれど、わたしは香葉みたいな活発な子じゃないし…。
「いい?莉桜」
わたしより少し背の高い香葉は、少し膝を曲げて目線をあわせてくれた。
大きい二重の瞳が揺れていたのは確かな事実。
「莉桜はこれが初恋だから仕方ないけど、莉桜が読んでるような少女マンガみたいにはいかないんだよ?」
わたしの知ってる恋……それは、彼女の言う通り少女マンガの世界だった。
わたしのような目立たない子でも主人公で、その子が一途に想いつづければ相手の男子もだんだんその子を意識するようになる。
そうして男子から告白されてハッピーエンド。
分かりきってる流れ作業のような話でも、わたしの中ではこれが普通だった。
何より、“わたしのような目立たない子”が主人公の話はすごく印象的。
いつか、こんな風な恋が出来るんだ――
そう思っていたのは決して嘘なんかじゃない。