この窓を飛び越えて…
今日だって例外じゃなく、そうしていた。
黒髪は揺れることなく、ちゃんと前を見ていた。
板書をする横顔は凛々しい。
今のわたしとは、大違いですね…。
ふとそう思って、思わず頬を緩ませた。
何となく、授業をやる気になって、わたしも同じように前を向き直す。
今日は教室移動と、向こうの時間割の関係でこの時間しか窓を開けることはできなかった。
最近、原田くんが窓を開ける度に寒そうな顔をするから少し罪悪感を感じている。
それに置き換えると、良かったのかもしれない。
そして――――
放課後になった…。
会議は4時半からだから、あと30分もある。
だけど九雪はもう来ているかもしれない。
いつの間にか、九雪との文化祭の話は噂になって広がっていたりして、今日のことも知らない生徒がいないことはない。
十雪が九雪に行った時点で、隠すなんてものは無謀だったと思うけれど。
香葉はこの放課後のチャイムを喜んで迎えた。
そして、わたしの腕を引っ張る。