この窓を飛び越えて…



「か、香葉!」

「何?」

「どこ行くの?」

「どこって、決まってるでしょ?」

「わかんないよ」

「昇降口よ昇降口!」


グイグイと引っ張られ階段を駆け降りる。

隣には逆に上る人もいたのだが、香葉はもちろんわたしも気づかない。


急ぐ気持ちも分かり、自分も精一杯ついていこうとする……けれど、


―――階段は嫌い。苦手。怖い。

その理由は一度、小学生の時に落ちたから。
それが今でもトラウマ。

そしてあの時も、こうして腕を引っ張られて、足を滑らせて―――


「っ…!」


……ふわり。
足元をすくわれる、同じような感覚がして目をつぶった。

デジャヴュなんてもんじゃない。
フラッシュバックでもない。
夢でも幻でもない。


「やっ…きゃあっ!!」


これは、―――現実―――

わたしは、また落ちるんだ。



「あっ…」


香葉の声が聞こえても、目を開けることはできない。

もうすぐ、痛みが自分を覆うだろう。
頭や身体とは違い、精神は冷静だった。


「莉桜っ!!」


香葉の叫びにも似た音が耳に入った瞬間、



痛みなんか感じず、




温かいものに掴まれていた。




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