この窓を飛び越えて…
夏はもうとっくに終わってしまった。
今窓から見えるのは赤や黄色の紅葉。
秋晴れの空は清々しくて、化学の実験をするにはもったいないくらいだった。
ふと、“窓辺の人”のことを考える。
スポーツ派の九雪校はもちろん体育の授業が多い。
あの人は、この空の下で運動をしているのでしょうか……
そう思うと、何も見えないのは分かっているのについつい窓に目を向けてしまっていた。
―――――――――
理科の授業は終わり、教室に戻る。
閉まっていた窓を慣れた手つきで開ける。
冷たい風がビュッと吹き込み、思わず目をつぶった。
数秒後、それをゆっくり開く。
ぼやけた視界が、直っていき…
いつもの“窓”を捉えたときだった―――
……………えっ…………
自然に口が開く。
瞬きを繰り返してしまった。
短い黒髪。
黒く透き通った瞳。
すっと高く整った鼻筋。
立ち上がった姿は初めて見たけれど、身長もある。
秋だというのに肘まで腕まくりをしたシャツ姿。
そこからは引き締まった細い腕が見えた。
そう、それは―――――