この窓を飛び越えて…
「莉桜?知り合い?」
「……」
香葉がわたしの前髪を持ち上げて、額を出した。
答える気力はなかった。
そして、頷いていいのかも分からない。
「でも今、イチトくんって…」
「……」
香葉の声だけが頭を駆け抜ける。
「まさか…、あの人が…“窓辺の人”?」
ピクリ。
耳と眉が動いた。
首を縦に動かすと、少しコキリと音がなった。
「まじ?!もっと顔見とくべきだった!!」
「べ、別に見なくてもいいよ…」
苦笑いを浮かべても、香葉の興奮は冷めない。
口を開けば、「黒髪しかわかんなかった!」。そればっかりで…。
「か、香葉。ここでいい…っ―――「ちょっと、あんたを送りにきたんじゃないの。顔見に来たの!」
バサリと言い切られた言葉には思ったより傷ついた。
こういうところが香葉っぽいっていったら香葉っぽいけれど。
そうこうしているうちに、後ろから来たのは麗奈ちゃんだった。