この窓を飛び越えて…
今日も物静かな様子で友達の話を聞いている。
それを見ているだけで、心がほわぁっと温かくなっていく。
わたしは見とれながらも、麗奈ちゃんに包み隠さず、全てを話した。
窓を見ていて好きになったことも、
名前をつい最近まで知らなかったことも。
そして、――今さっきの出来事も。
「じゃあ何?土井くんは、莉桜のことを覚えていてくれたんだ」
「わかんないけど…そうだと嬉しいな……」
こんなに自惚れてしまうなんて初めてかもしれない。
だけど、今は純粋にそう思っているんです。
“窓辺の人”が、わたしを知っていてくれていますように…。
それが単なる顔見知りでも、名前を覚えてくれていなくても構わない。
わたしにとっては、そんなことどうでも良かった。
濡れているのに気づかれないようにシトシトとふる霧雨。
……むしろ、その霧雨を降らせる雨雲でもいい。
青空の隅のほうにあったそれに、ようやっと気づいてくれた…。例えれば、そんな感じ。
それだけで、幸せです………
わたしの想いが、彼に伝わらなかったとしても…。