この窓を飛び越えて…
名前も知らない恋の相手…
―――――“窓辺の人”―――――
時間が止まったようだった。
息がつまるようで、
心臓は活発に動く。
向こうもわたしを見ていて、もうすでに顔は真っ赤になっているのに違いない。
それでも、
目が逸らせない………。
温かい気持ちが溢れ出すんだ…。
泣きそうになるくらいに、
感情が沸き上がる。
「…斎藤?」
ふと耳を貫いたものに肩を震わせて、わたしはやっと視線をずらした。
話しかけてきたのは隣の席の人。
確か名前は……
「原田くん、でしたっけ……?」
確認を口に出してしまい、慌てて塞いだ。
「す、すいません…っ」
目立つのが苦手なわたしは、同じように男性と話すのも苦手だ。
同級生にだって敬語を使ってしまう。