恋愛偏差値0
電気を消したあとの暗闇を、伸はなににもぶつからずに器用に歩いている。
あたしは、自分の旅行かばんにぶつかったりと大変だ。
伸の背中はあたしになにも話しかけてはくれない。
どうして怒っているの?怖くて、聞けなかった。
どこに行こうとしているのか。
部屋の中を歩いているのは確かなんだけど。
「あ」
あたしに気を向かせるための小さなさけびも、暗闇に消えた。
どうして怒っているのよ。
なにも言ってくれない背中に頬をふくらませる。
「あった」
「へ…」
電気がついた。
まばゆい光に、あたしは目をしばたたかせる。
しばらくして、目を開いてみると、なにかを持っている伸。