狂愛の鳥籠
七滴
しかし


戻って来た彼に変わりはなかった。


『何を準備して来たの?』
「君は気にしなくていい」

彼女に近づく彼。
優しい笑顔。

その裏の思惑は、背中のナイフ。


「さあ…逝こう?立って」

手を差し出す彼。
手を取る彼女。


『えぇ。ありがとう』

彼女は立ち上がる。

すると、彼は急に腕を引っ張り、彼女を抱き寄せる。
戸惑う彼女。

『…っえ?ちょっと何す…ゔッ…っ…』

顔が歪む彼女。
涙を流す彼。


服に広がる赤いモノ。


「これしか…無いんだ…。ごめんよ。君を一人にはしない。二人で逝こう?」


滴り落ちる赤いモノ。
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