砂場のロケット 〜キミと見る群青〜
『 …俺は新宿に映画を見に行った日
初めて
電光掲示板の中で歌うアズを見たんだ
―― それからずっと
アズの幸福だけを祈って来た
でも実際
それを目の当たりにしたら… 』
真木が灰皿を持ちつつ
キッチンからリビングへ
広いベランダの窓を、大きく開く
カーテンが揺れ
どこかで風に
本が連続でめくられる音
真木はサッシを背に
水色の空を見上げながら
少し遠い目をしながら呟いた
「 朝になって、二人で出て来て
アズルが朝メシ作って、
楽しく皆で食ったんだろう?
しかもその後、
ユカが初のオリジナル作って
一日掛かりで
デモまで作ったみてえじゃねえか 」
『 …よく知ってるね 』
「 青山からも、アズルからも聞いたし
タカコが何しろ、大喜びだったからな 」
『 …そっちの理由は納得した 』
タカコって言うのは、真木の妹
高校生だ
ユカちゃんは、俺も話した事があって
その妹とバンドを組んでるベースの子
灰谷や…青山のいる"CheaーRuu"が
デビューするキッカケになった
バンドコンテストに
彼女達のガールズバンドも出演していて
その縁で今も
プロとアマチュアの違いはありながら
交流がずっと続いている
『 … でも青山さんとアズの事は
空哉さんの意見は、納得行かない
―― 普段の、表に向けてる青山さんは
穏やかで、一般常識とか重んじるけど
それ以外、素の部分では
かなり魔王入ってる人だし… 』
「 だからだよ 」
―――――― あ