砂場のロケット 〜キミと見る群青〜
全身の力が抜けた
…… 体になんかに意味はない
ずっとそう思って、
だからこそ
そんな事関係の無い世界で
俺はアズの『中身』を好きになった
でも俺は
実際、生身のアズに会って
… 心だけでは
体だけでも
心がそこに無いと辛いって事を
痛い程知ったんだ…
――― そして
真木の言葉には説得力があった
きっと二人のその頃を
… 知っているからだ
「 そろそろ 時間か? 」
真木が不意に、壁に掛かった時計を見て
玄関の方へと向かった
スリッパを二人分、並べている
「 …真木、誰か来るのか? 」
「 おう
夏に野外でまたイベントやるんだけど
今年はそこに、
人工雪降らそうとか企画立ってて
その時にかける曲を、作ってくれた人
―― 本来ならこっちから
出向かないといけないんだけど
少し、観光してから来るってんでさ 」
「 …… 観光 」
「 岡田も知ってる人だぞ
だけど一人、連れが居て…
年近いから、
よかったら相手してあげてくれ
女の子だ 」
――― 女…
「 ちょっと今は、
エンリョしたいって顔だな 」
「 ……… 」
その時、チャイムの音
「 お、来たかな? 」
真木はインターホンに向かうと
そこからは男性の声
【 クウヤくん 来たよ 】
―――― え?!
俺はその声を聞いて、慌てて姿勢を正した
真木が、そんな俺を見て
再び爆笑の声を挙げる ―――