砂場のロケット 〜キミと見る群青〜
「 バレンタインには何が欲しいか ――
そんな電話が、突然かかって来て…
ここには
久しぶりに越して来たばかりで
殺風景だったから
絵の素材にもなるし
"花でも頂戴"って言ったらね
――― 造園業者一個部隊が
すごい勢いで乗り込んで来た 」
真木が笑う
「 笑い事じゃないよ? クウヤ
確かにルウは、勢いあるけど
こういう実行力は
絶対に、キミから学んだ ――― 」
「 でも、嬉しかったろ? 」
そう言われた瞬間
微妙な表情で、ムッとするハルト
「 ――… どうだったの ルウは 」
「 どうもこうも
ただの痴話喧嘩でしかねえよ
心配いらねえ
…… それより
思い出さなくてもいい
余計な記憶も思い出しやがった 」
ハルトの顔に、冷たさが戻る
「 ――… どれ? 」
「 ルウと流氷見に行こうとして
… オレがぶっ倒れて
オマエが駆け付けてくれた時のだよ
これからアイツの事
バカバカ言えなくなくなるじゃねえか 」
俺も珈琲に、口をつける
真木の
どこか同意を求めている感じの
素が出まくった物言いが笑える
「 ああ…
若気の至り、馬鹿丸出しだった時か
――…… 俺のは? 」
「 ―― どの辺のだ? 」
ハルトは
無表情な眼の奥に
暗い光を宿す