砂場のロケット 〜キミと見る群青〜
しかし ―――
アドリアナはいつまで経っても
後ろに乗らない
地面を不服そうに見つめながら
ずっと足を交差したりして
落ち着かずにいる
「 …遠山さんが
この作者さんもさ
すごく優しい人だって言ってたから 」
… 実は、この服が一番、破損がヒドい
引っ張り合いにでもなったのか
丸襟の部分に付いているレースが
半分近く、取れてしまっている
「 ―― なあ、アナ 」
「 ……… 」
「 おまえこの服、実は
本当に欲しかったんだろ 」
アドリアナが、ビクリと肩を揺らす
――― 黒いシルク生地に
ドレープの入ったワンピース
最近また復活して来たゴシックや
ゴスロリ風ではあるけど
甘いだけじゃなく、上品に仕上がっていて
タグも刺繍されていて、かなり凝ってる
黒いバックに、両開きの窓
そこに、『青戸』と銘
… 少し、いや
かなり腕がいいと言うか
この服を見た時、
もしかしたら服好きにしか
判らない感覚かもしれないけど
一瞬、胸の奥がゾクリと来て ―――
だから
「 これ…
直して貰って、
それから店に戻って謝ってさ
… この服に合いそうな
ガラス加工のサンダルあったろ
足首留めのさ 」
「 … うん 」
「 あれも、一緒に買ってやる
――― それから二人で
メシ、どこか食いに行こう 」