秘書室の言えなかった言葉
俺は、驚いて固まる知里を見つめながら続ける。


「俺、その日に佐伯さんから知里と付き合っていた事を聞いて……。その後、知里の寝言だろ?
だから、もしかして知里は佐伯の事を今でも……」


好きなんじゃないかって……


そう言おうとする俺の言葉を


「それは絶対にない!」


知里は遮る。

そして、俺の腕を掴み、知里はまっすぐ俺の目を見る。


「今も専務の事を好きだなんて、絶対にない。私が好きなのは英治だよ」

「じゃぁ、どうして……」


俺を好きだと言ってくれる知里のその一言で、俺はすごく嬉しくなるのだが、やっぱり寝言が気になるんだ。


「寝言だよね?多分……、その日、専務と別れる事になった原因の日の夢を見たから」


知里は視線を逸らす事なく、まっすぐ俺を見ている。


「夢?」


佐伯さんの夢を見るって事は、無意識に佐伯さんの事を考えていたからなんじゃ……


知里は嘘を付かない。

だから、知里の気持ちを疑いたくない。

だけど、一度、不安を覚えた俺は、悪い方、悪い方ヘと考えてしまう。


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