秘書室の言えなかった言葉
「だけど、“彼女になって欲しい人”はいるよ?」


倉木は私をまっすぐ見つめながら言う。


そうだよね……

倉木には好きな人がいるんだから。

っていうか、その噂も本当だったんだ……


ホッとしたのも束の間。

ショックな気持ちになる私。

だけど、倉木に見つめられると、ドキドキしてしまう。


諦めるのには時間が掛かりそうだな。

だって、私の気持ちは聞こえていたはず。

私もとぼけたけど、倉木も何も言ってこない。

っていう事は、フラれたも同然。


私が黙っていると


「誰だと思う?」


って、そんな事、聞かれても


「……わかんないよ」


私は倉木から顔を背ける。


だけど、その瞬間。

私は腕を掴まれ、グイッと引き寄せられる。

そして、力強く抱きしめられ


「園田……、お前だよ」


倉木は耳元で、そう囁いた。


えっ?


倉木の言葉が理解できない私。

倉木の腕の中で固まっていると、そっと私の身体を離し


「さっき園田が一人で言っていた言葉って……、本当?」


倉木は私の髪に指を絡ませながら聞く。

倉木のそんな行動に、私の心臓は倉木に聞こえそうなくらい、うるさく動く。

固まって黙ったままの私に


「俺……、ずっと園田の事が好きだった。なぁ、俺の彼女になって?」


倉木は熱っぽい視線で私を見る。


< 12 / 131 >

この作品をシェア

pagetop