秘書室の言えなかった言葉
「倉木、それって……」

「今は、まだ言わない。だけど、いずれ言うから覚悟しとけよ?」


そう言って、倉木は笑顔を見せる。


「うん」


私は嬉しさのあまり、倉木にぎゅっと抱き着いた。

そんな私の背中を撫でながら


「なぁ、園田……。そろそろ離れないか?」


倉木は何故か言いにくそうに言う。


「えっ?あっ、ごめん……」


ここは会社。

みんな帰ったはず、とはいえ、いつまでもこんな事をしていたらダメだよね。

なんて、わかっているのだけど。

はっきりそう言われると、少し寂しい気持ちになる。

私が離れると


「あっ、いやぁ……、そういう事じゃなくて……」


倉木は、ますます言いにくそうに言葉を濁す。


「ここ会社だろ?ずっと触れたかった好きな人にそんなに抱き着かれるとさ……、会社だけど抑えられなくなる」


倉木は恥ずかしそうに言う。


えっ?


一瞬、理解出来なかったが


「あっ、ごめん」


倉木の言いたい事に気付いた私。

倉木の照れが私にまで移り、私の顔は真っ赤になる。


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