秘書室の言えなかった言葉
そして、今。

社長から誠司の秘書になる事を伝えられた。

“ここは、どうすべき?”

私は頭をフル回転させる。


別れてからしばらくの間は、もちろんショックだったし

“もう恋なんてしない!”

そんな風に思っていた。

でも、英治が秘書課に異動してき、英治の事を知り、気が付けば、英治に恋をしていた。

今、誠司に会ったからって、気持ちが揺れ動くなんて事は全くない。

だけど、何となく、英治に誠司と付き合っていた事を知られたくなかった。


そりゃぁ、私達はいい大人。

お互い過去に恋人がいた事くらいはわかっている。

でも、元彼の秘書をする……

という事は、仕事上、誠司と二人きりになるという状況もあるという事。


もし、英治が仕事で元カノと二人きり……

仕事だとわかっていても、私は嫌だ。

英治はどう思うかわからないけど、自分が嫌だと思う事はしたくない。


じゃぁ、ここは?


“はじめまして”

と、初対面の挨拶をするべきか。

仕事だから、元彼という事をわざわざ言う必要はない。

だから、とりあえずここは

“お久しぶりです”

と、親しさを出さずに、他人行儀な口調で挨拶をするか……

どう挨拶をしたら、何事もなく過ごせるか……


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