秘書室の言えなかった言葉
「何でって……。いつもほとんど飲まない知里が、あんなにフラフラになるまで飲むなんておかしいだろ」


英治は怖い表情をしたまま言う。

英治はいつもと違う私を心配してくれているのだろうけど。


でも、ごめん。

言えないの……


誠司に会って、気持ちが揺れているなんて事はない。

私が好きなのは、英治。

気持ちもはっきりしている。

そうなんだけど、今、私は誠司の秘書。

二人きりになってしまう事はある。

元彼だって事を話して余計な心配は掛けたくないの。


黙ったままの私に


「知里さ、何か隠している?」


英治は聞いてきた。


えっ……

もしかして、バレてるの?


「えっと……、何で?」


ドキドキしながら私は聞き返す。


「佐伯さんが来てから、様子がおかしいから」


英治はまっすぐ私を見つめ、そう言った。


もしかして、昨日、誠司から聞いたの?

私と誠司が昔付き合っていた事を……


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