秘書室の言えなかった言葉
それから、英治とは職場では挨拶くらいはするが、それ以上の会話はなかった。

だから、仕事が終わってから電話やメールをしてみるが、英治は電話に出てくれる事も折り返し連絡をくれる事もなかった。


私、避けられている?


結局、英治と話せないまま週末を迎える。


明日は休み。

とりあえず、今日の仕事が終わったら、英治の家へ行こう

そして、ちゃんと話しをしよう

そう思っていた。





そして、定時も過ぎ、みんな帰って行く。

今、秘書室にいるのは私一人。

社長秘書をやっていた時、定時で帰れる事なんてなかった。

英治の鞄はまだある。

きっとまだどこかで仕事をしているのだろう。

英治が戻って来るまで、ここで待っていよう。

その前に、自分の仕事を終わらせなきゃ。

そう思い、パソコンに向かっていると


「知里」


振り返らなくてもわかる。

今、私を呼んだのは……


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