秘書室の言えなかった言葉
「ちょっ……、本当、ヤダ……」


嫌がる私の事なんて気にせず、誠司は顔を埋めたまま


「なぁ、俺達、やり直さないか?」


甘く囁くように言う。


はぁっ!?

今、何て言った?


誠司の言葉にムカついた私は、思い切り突き飛ばす。


バランスを崩した誠司の腕の力が緩んだ隙に、私は立ち上がり、誠司から離れる。

そして、


「何言ってんのっ!誠司、私に何したか覚えてんのっ!!」


ムカついた私は会社だという事を忘れ、つい声を荒げる。


「やっと名前呼んだ」


そう言って、フッと笑う誠司。


「そんなの今、関係ないっ!あの時、浮気したのは誠司でしょ!!」


あれが浮気なのか、実は私が浮気相手だったのかはわからないし、そんな細かい事は、今はどうでもいい。


「それでよく、そんな事言えるよね」


あの時、私は何も言えずに帰った。

だけど、もうあの頃の私じゃない。

あの頃よりも大人になったし、強くもなった。

だから、思っている事はちゃんと言うんだ。


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