秘書室の言えなかった言葉
「もう、あんな事しないから。知里だけだから」


そう言いながら、誠司は私に近付いてくる。

私は後退りしながら


「そんな言葉、信じられるわけないでしょ!っていうか、やり直すなんて絶対にない!」


そう言い切った私は、気付いたら壁際まで来ていた。


「何で“絶対”って、言い切れんだよ」


そう言いながら、私を追い詰め、ニヤッと笑う誠司。

何か企んでいそうで、怖くなる。


「私、付き合っている人いるから」


誠司から目を逸らさず言う。


「あぁ、聞いた。倉木だろ?ってか、倉木も遊んでいるんじゃねぇ?だって、アイツ、モテるから選びたい放題じゃん」


左手で私の肩を掴み、右手は私の髪に絡める。


「倉木はそんな事しない!!」


私は誠司をきつく睨む。


「何で言い切れんだよ。わかんねぇじゃん」


ムッとした誠司は私の肩を掴む手の力を強める。


「痛いよ、離して!」

「嫌だ。知里が俺の所に戻ってくるって言うまで離さねぇ」


誠司は私の肩を掴んだまま、壁に押し付ける。


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