秘書室の言えなかった言葉
倉木に彼女が出来た事を受け入れようとするけど、一度溢れ出した涙はなかなか止まらない。

ハンカチで目元を押さえながら


「くらきぃ……、ほんとは、ずっと好きだったんだよ……」


今まで勇気がなくて、言えなかった言葉を呟いた。

今さら言っても仕方ないのに……


「えっ……?」


だ、誰っ!?


秘書室に今居るのは一人だと思っていた私は驚き、そして、声のした方を見る。


「く、倉木……」


秘書室のドアの所には、驚いた表情をしている倉木の姿が。


「今の、本当?」


そう言いながら、倉木は私に近付いて来る。


こんな形で倉木に聞かれるなんて。

しかも、倉木には、今、彼女が出来たのに……


私はどうしたらいいのかわからないのと、恥ずかしい気持ちで、パッと倉木から身体ごと背ける。

だけど、倉木に両肩を掴まれ、グイッと戻される。

そして、


「なぁ、今の言葉、本当?」


真剣な目で見つめられ、もう一度聞く。

気持ちを聞かれてしまった事の動揺と、倉木に見つめられているドキドキで、私の心臓はすごい早さで動いている。


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