君と僕とひまわり
こういう成り行きで
私はコンピューター部に入部することとなった。
どうやら部員は、あの人と私の二名だけらしい。
部室には、もう彼がいた。
さっそくパソコンを起動させて、カタカタと
キーボードをタッチする音が響く。
「こんにちは」
しばらく間を開けてから、彼も返事を返す。
「君もこの部活に入部したんだね」
私は頷くと、適当に一番近い席についた。
このコンピューター室は、南校舎の最上階の端にある。
ただでさえも、南校舎に人影が少ないというのに
最上階の端なので、ほとんど音がない。
時々、どこか運動部の勇ましい掛け声が聞こえてくる。
時計の秒針がこだまする。
「ねえ、あの本さ」
彼の落ち着きをはらった声が沈黙を破る。
「海の上のピアニスト?」
「そう、あれはいいね。実にいい。」
彼の話し方に愛着を感じる。
「私は初めてあれを見た時泣いた」
「見た?」
「あぁ、私はあのストーリーを映画で見たの。それで、気に入ったから本も読んだ」
彼がこっちを向く。
「映画の方が迫力があるだろうね。なんたってピアノが主点なんだから」
「そうだね」
私は微笑んでから頷く。