君と僕とひまわり
昼休みになると、思った通り、あの青年が来ていた。
今日は、ヘッドホンを耳から外して、首にかけている。
また、必死に何かの本を探しているようだ。
昨日と同じ文庫の中で探しているようだ。
私は、持っている本を本棚に返したいが、
それには、彼にどいてもらわなければならない。
「あの・・・ごめんなさい・・・」
昨日とは逆のシチュエーションだ。
彼は顔を上げる。
と同時に驚いた素振りを見せる。
もしかしたら、私の名札を見て気づいたのかもしれない。
「あ・・・あった・・・・」
彼は私のことを指さす。
「なんでしょう?」
何のことかさっぱりわからない。
「その本を探してたんだ。返すところなら、借りてもいいかな?」
「あ・・・はいっ・・」
本を差し出す。
「どうぞ」
「ありがとう。」
綺麗な細い指が見える。
今しかチャンスはないと思い、思い切って話しかける。
「あのっ・・・」
「ん」
彼はまた私の事を見つめる。
「部活・・・入りますか?」
彼は黙っている。というよりも、私が誰なのか認識しようとしているようにも捉えられる。
「あ」
彼の豆電球が光った。
「宮井さんだ。」
「はい」
微笑む。というよりもほっとした感覚だ。