短編集
線香花火
初めて男の人を
綺麗だ って思ったの。
―線香花火―
「ちとせちゃん」
ふいに呼ばれる、私の名前。
声の主を見るとひとつ上の先輩である本多悠であった。
「悠くん、なに持ってるの…?」
「ちとせちゃんも裏庭来てよ!」
そう言って悠くんは駆け出した。
じろり、と回りの視線が私に集まる。
本多悠、彼はあれで不良少年なのである。
ハデな髪色に似合わないベビーフェイス。
しかし彼の回りはいつもたくさんの人がいる。
つまりは人気者なのだ。
一方私は地味、というか普通の高校生である。