おバカくん



近所のオバサンたちがいうように、あたしは泣かなかった。


認めたくなくて‥

あたしは泣かなかった







小さい頃から

父に勉強で強く、一番をとれと言われ続けていた




でも、いつも母は

「そんなのいらないわ。元気に育ってくれさえすれば」


と、言ってくれていた






そんな母に怒鳴る父が嫌で

勉学に励んだ。




そのおかげで、常に上から五位以内に入っていた



母が亡くなった後のテストも二位というものに


学校の人らがいうように、陰口を言われ続けた。






千南や、雄大も心配してくれたけど

あたしには余裕がなくて、避け続けた。





いつも、いつも図書室へ行くと

相変わらず、頼がいた。







何か言われるな、と思ってあたしはいつもの場所には座らず離れた席についた。




頼はあたしを見て、


あたしの隣に座った。






何も言わず、いつものように隣にいた。



あたしも何も言わず、頼の隣にいた。






それから、

少しずつ余裕ができてきたときにいつもは見ない、頼の顔を覗き込んだ






頼は複雑な顔をしながら、逆さまになっている本をボーっと見ていて

あたしには気づかなかった。



『どうしたの?』





あたしから珍しく話しかけると


作ったような笑顔じゃなくて、初めて見る素の笑顔で


『よかった。』


と、呟いた






そのとき


あぁ、頼にも心配かけてたんだなって思った




頼は口は悪いし、自己中極まりないけど

不器用でいい奴だった。








それから、あたしはどんどん頼を好きになっていった。

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