臆病な初恋。
―――放課後の誰も居ない教室。
違う、私と亜清しか居ない教室。
亜清は窓に寄りかかりながら、腕を組んでいた。
黒髪が陽に透けて淡い茶色に見える。
見慣れているはずの亜清なのに、その日の亜清はいつもより格好よく見えた。
不覚にも胸が鳴る。
「これから、どうすっか」
「一緒に居ると笑われちゃうもんね」
「学校ではなるべく離れてるか」
確かに周りの人達に笑われたりするのは嫌だ。
だけど亜清と離れるのは、もっと嫌だ。
友達は居るけど、亜清と一緒に居ると楽しい。
でも、亜清の言った通り、離れていれば笑われる事はない。
それに学校に居る時だけ離れていれば良いだけで、外ではいつものように一緒に居られる。
「そうだね、学校では離れてよっか」
これにて解決。と、思ったら、悩んだ顔をしている亜清。
「どうしたの?」
声をかけても、ずっと下を向いたままだ。
見兼ねて傍に寄ると、やっと顔を上げた。
その表情は先程までの何かに悩んだ表情ではなく、真剣な面持ちだった。