抹茶な風に誘われて。
「――馬鹿にするな」

「……え?」

 戸惑うかをるが見上げてくる。

 自分でも何を言っているのかわからない。

 それなのに、喉は理性とは裏腹に声を紡いだ。

「この一条静をふるって言うのか。そんなこと――絶対に許さない」

「せ、静さ……」

 わきあがる気持ちのままに強く抱きしめたら、かをるは目を見開いたまま動かなかった。

「お前がそのつもりなら俺だってもう遠慮はしない。もう二度と、俺から逃げようとは思えなくなるようにしてやる」

 気づけば顎を上向かせ、唇を奪っていた。

 そう――無意識のうちの、二度目のキス。

 手加減も、大人の余裕もすっかり忘れた――本気のキスだ。

 舌を離したら、かをるはへなへなと崩れ落ちた。

 ――しまった。

 我に返った時にはもう遅く、そこは路上のど真ん中で。

 宅配の若い男やら、ホースで水を巻く主婦やら、ついでに背後でかをるの自転車をゆっくり押していた三人やらにしっかり目撃されていて。

 俺は何食わぬ顔で、力の抜けたかをるを再び家に運ばなければならなかった。

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