抹茶な風に誘われて。
 付き合っている、なんて言ってもまだまだ実感なんてわかなくて、そもそも『付き合う』ということ自体初めてな私には、どういうものなのかわかるわけなんてないから。

 茶道を教えてもらったり、勉強を見てもらったり、もちろん年上で色々なことを知っている静さんには教わることばかりだから、自然とそういう態度になってしまうのかもしれない。

 だけど私はいつもどきどきしてばかりで、お話したりするだけで胸がいっぱい。

 緊張するけれど、ただそばにいられるだけで私は十分幸せで――このままじゃ、いけないのかな?

 付き合うっていうのはこういうことじゃないのかな?

 そんなことを悶々と考えてしまう自分に静さんが気づいているのかはわからないけど、いつも大人で、余裕たっぷりな態度は変わらない。

 静さんは、私といて楽しいって思ってくれてるんだろうか。

 付き合っていて、よかったって思ってくれているんだろうか。

 不安と緊張と混乱と、いつも頭にあるのはそんな未知の感情ばかり。

 ――いけない。もうお店に着くのに、こんなことばかり考えてちゃ。

 見慣れたグリーンの看板が見えてきて、自転車を停めた私は、店先で接客をしている葉子さんに会釈をし、裏手に回った。
 

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