抹茶な風に誘われて。
「あ~疲れたあ! やっと一学期も終わったねー! かをるちゃんは夏休みどうすんの?」

 終業式が終わって下駄箱にいた私に、咲ちゃんが訊ねた。

 思いっきり伸びをして、まさに開放感たっぷりなその笑顔に私は笑う。

「私はお店のお手伝い。咲ちゃんは?」

「あ、そっか、バイトかあ。あたしは部活。テニス部で汗流すよ!」

 ポニーテールのサラサラした黒髪をなびかせて、咲ちゃんは冗談めかしてラケットを振る真似をする。

「でもちゃーんと彼氏と一泊旅行も行くつもりだけどね~。海、海!」

 うふふ、と笑って付け足す咲ちゃんに、先に靴を履き終わった優月ちゃんが反応した。

「ええ~いいなあ、いいなあ。海に一泊なんて、ロマンチック~! そういうとこだとまた雰囲気が盛り上がっていいよね!」

「そうなのよ~やっぱ付き合って半年も経つとさ、ちょっとマンネリしてきちゃって」

「あ、わかるわかる~彼氏の部屋とかさ、デートもお金かけなくなっちゃったりね~」

「でしょでしょ~? 男はアレしか頭にないからやだよね~」

 盛り上がってる二人の勢いにちょっとついていけてない私に気づいたように、きらきらした優月ちゃんの目が私に向いた。

「ねえ、かをるちゃん! かをるちゃんもそう思わない?」

「あ、えっと……」

 困った顔をしてみたけど、優月ちゃんは更に迫ってくる。

「特にかをるちゃんなんか華奢で可愛いからさ、彼氏が離してくれないでしょ~!」

 私より背の高い優月ちゃんに覗き込まれて、ついに答えずにはいられなくて、私は言った。

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