抹茶な風に誘われて。
動きを止めた優月ちゃんと相手の女の人の前を、ごろごろ転がっていくのは通りに置かれていたごみ箱。
幸い中身は入っていないものだったみたいだけど、誰かが蹴飛ばしたらしいことに気づいたのか、優月ちゃんたちが揃って興奮したまま転がした相手のいる方角を睨み付ける。
「なっ、何すんのよっ! どういうつも……」
り、と言葉を途中で止めた女の人の顔が、瞬時に赤く染まるのが見えた。
隣で息を荒くしていた優月ちゃんも、言葉が出ないのか口を開いたまま固まっている。
ぽうっとなった目つきは、まるで誰かに見惚れているような――。
「わざとじゃないんだが、足があたってね」
優月ちゃんたちの顔を見ていた私が弾かれたように振り向いたのは、耳に深くしみこむ低音のせい。
――こ、これって……!
いつ聞いても胸がドキドキして、心臓をぎゅっと握られたみたいな感覚にとらわれて。
怖いくらい緊張するのに、同時にいつまでも聞いていたくなって。
その声が聞けない時は、寂しくてたまらなくなる――この世で唯一の、声の持ち主。
「せ、静さん……?」
遠くで私がそう呟いていることには気づかずに、グレーの瞳は冷たく優月ちゃんたちを映していた。
幸い中身は入っていないものだったみたいだけど、誰かが蹴飛ばしたらしいことに気づいたのか、優月ちゃんたちが揃って興奮したまま転がした相手のいる方角を睨み付ける。
「なっ、何すんのよっ! どういうつも……」
り、と言葉を途中で止めた女の人の顔が、瞬時に赤く染まるのが見えた。
隣で息を荒くしていた優月ちゃんも、言葉が出ないのか口を開いたまま固まっている。
ぽうっとなった目つきは、まるで誰かに見惚れているような――。
「わざとじゃないんだが、足があたってね」
優月ちゃんたちの顔を見ていた私が弾かれたように振り向いたのは、耳に深くしみこむ低音のせい。
――こ、これって……!
いつ聞いても胸がドキドキして、心臓をぎゅっと握られたみたいな感覚にとらわれて。
怖いくらい緊張するのに、同時にいつまでも聞いていたくなって。
その声が聞けない時は、寂しくてたまらなくなる――この世で唯一の、声の持ち主。
「せ、静さん……?」
遠くで私がそう呟いていることには気づかずに、グレーの瞳は冷たく優月ちゃんたちを映していた。