抹茶な風に誘われて。
「あの、えっと――何の話?」

 途端、「またまたあ!」なんて肩を叩かれて、にやにや笑う優月ちゃんを見かねたように咲ちゃんが割って入ってくれる。

「だめだめ、優月! この子、今時珍しいくらい純で、乙女な子なんだから。そんなストレートな話したら、刺激が強すぎ」

「えっ、ストレートって――もしかしてかをるちゃんってば、まだバ……!」

 目を丸くして何か言いかける優月ちゃんの口を、咲ちゃんがあわててふさぐ。

「しっ! だからあ、かをるちゃんにそんな単語NGだってば!」

「えっ、そうなのお!? もしかしてもしかすると、ホントに今の話、何のことだかわかんないとかってことは――」

 大きな声で言い続ける優月ちゃんを引っ張りながら、咲ちゃんが苦笑いして「えーっと」と何度か言った後、ふと思いついたように両手をポンと打った。

「そっ、そうだ! そういえばさ、昨日河原で見た外人みたいな人、すっごくかっこよかったよね!」

「あっ、そうそうー! あたしも思わず見惚れちゃったあ! いいなあ、かをるちゃん、あの人と話しちゃったりしてーねえねえ、本当に何話してたのー?」

 ようやくよくわからない話題から解放されたのかと思いきや、またまた瞳をきらきらさせて訊ねてくる優月ちゃん。

 昨日も何度か聞かれた問いに、私は困りながらまた同じ答えを口にする。

「えっと、だからただ道を聞かれてただけだよ。大した話なんかしてないから――」

 あの後、他のクラスメイトの女の子たちにもしつこく聞かれたのだ。

 ゴミ拾いをさぼってたのを先生に怒られてたから、近くには来られなかったみたいだけど。

「えーっ、でもさあ、そんな風には見えなかったよ? 本当にナンパじゃなかったのお?」

 くるくるカールがかかった茶色の髪を揺らして、また聞いてくる優月ちゃんを止めてくれたのは、咲ちゃんだった。
< 12 / 360 >

この作品をシェア

pagetop