抹茶な風に誘われて。
Ep.5 かをる―キス
「じゃーんっ! ほら、かをるちゃんの衣装!」
嬉しそうに優月ちゃんが差し出したもの――それは猫の耳のついたカチューシャと、それから作り物の猫のひげ、そして白い着物だった。
朝から打ち明けるべく張り切っていたのに、今日に限って咲ちゃんは風邪でお休み。
文化祭の準備にあてる時間が増えたから、必然的に話題はおばけ屋敷のことになるわけで――。
「え、えっと……これは?」
渡された猫の耳を戸惑いながら見つめていたら、優月ちゃんがおかしそうに私の肩を叩いた。
「だからあ、言ったでしょ? かをるちゃんには猫娘のカッコしてもらうって! その衣装だよ、ほらおばけ役の!」
そう言われてやっとわかったものの、白い衣装と不釣合いに見える猫の耳にまだ首を傾げる私。
「え? こんなの着るのいやだった?」と覗き込まれて、あわてて私は首を振る。
「あっ、ううん! そういうことじゃなくって、ただおばけがどうして猫の耳をつけるのかなあって……あの、猫娘っていうのは、猫のおばけなの? 化け猫みたいな感じなのかな」
普通に訊ねたつもりだったんだけど、優月ちゃんは一瞬ぽかんとして、それから周りの女の子たちと一緒に笑い出した。
「やーだあ、化け猫って! 猫娘だよ、まさかマジで知らないのお? 見てない?」
そう言って有名だっていうアニメの話をしてくれた優月ちゃんに、私は申し訳なくなりながら、またそっと首を振った。
「ごめん、私あまりアニメとかも見てなくって……」
施設にもテレビはあったから、見てる子たちは知ってるんだろう。でも私はあまり賑やかな場所が好きじゃなかったから、静かに絵本を読んだりしてた。
好きなのは、世界名作物語や童話の類。だからみんなが当然知ってるだろうと思うような漫画もアニメも詳しくなかった。
そんな説明をする前に、優月ちゃんはおかしそうに続ける。
嬉しそうに優月ちゃんが差し出したもの――それは猫の耳のついたカチューシャと、それから作り物の猫のひげ、そして白い着物だった。
朝から打ち明けるべく張り切っていたのに、今日に限って咲ちゃんは風邪でお休み。
文化祭の準備にあてる時間が増えたから、必然的に話題はおばけ屋敷のことになるわけで――。
「え、えっと……これは?」
渡された猫の耳を戸惑いながら見つめていたら、優月ちゃんがおかしそうに私の肩を叩いた。
「だからあ、言ったでしょ? かをるちゃんには猫娘のカッコしてもらうって! その衣装だよ、ほらおばけ役の!」
そう言われてやっとわかったものの、白い衣装と不釣合いに見える猫の耳にまだ首を傾げる私。
「え? こんなの着るのいやだった?」と覗き込まれて、あわてて私は首を振る。
「あっ、ううん! そういうことじゃなくって、ただおばけがどうして猫の耳をつけるのかなあって……あの、猫娘っていうのは、猫のおばけなの? 化け猫みたいな感じなのかな」
普通に訊ねたつもりだったんだけど、優月ちゃんは一瞬ぽかんとして、それから周りの女の子たちと一緒に笑い出した。
「やーだあ、化け猫って! 猫娘だよ、まさかマジで知らないのお? 見てない?」
そう言って有名だっていうアニメの話をしてくれた優月ちゃんに、私は申し訳なくなりながら、またそっと首を振った。
「ごめん、私あまりアニメとかも見てなくって……」
施設にもテレビはあったから、見てる子たちは知ってるんだろう。でも私はあまり賑やかな場所が好きじゃなかったから、静かに絵本を読んだりしてた。
好きなのは、世界名作物語や童話の類。だからみんなが当然知ってるだろうと思うような漫画もアニメも詳しくなかった。
そんな説明をする前に、優月ちゃんはおかしそうに続ける。