抹茶な風に誘われて。
放課後、お店に向かう帰り道で電話したら、静さんが少し忙しそうに出た。
話があると言ったら、今日は遅くまでクラスがあるから、終わる頃にそこまで来てほしいと言ってくれて。
一緒に夕食でもとろうと提案してくれた静さんの言葉に、私は少し――ううん、かなり浮かれていたのだ。
だから忘れてしまっていたのかもしれない。
それが隣町の市民会館で行われる、茶道のクラスだってことを。
ちょうどバイトが終わった八時過ぎに駅へ向かって、市民会館の前に着いたのは八時半。
指定された噴水前に腰を下ろして、私は手鏡で髪の毛をチェックしたりしていた。
そろそろ静さんが出てくる頃かなあ、なんてわくわくしながら自動ドアを見つめていた、その時。
お仕事の後に習いに来ているのだろうOLさんらしき女の人や、年配の男性、そしてご近所から来られているようなおばさまたちに混じって、ちらりと見えたのは着物姿の静さん。
もう夜だからなのか、それとも一応講師であるからなのか、いつもみたいな気楽な着方じゃなく、ちゃんと羽織と袴も付けた品のある着こなしだった。
濃い藍色の色合いが浅黒い肌によく似合っていて、とても素敵で――つい見惚れてしまいかけた瞳に映ったのは、その前に回りこんだ赤いミュールの足。
「あ……」
思わず声がもれた。
そしてようやく思い出したんだ。
優月ちゃんが言っていたのは、このクラスのことだったんだって――。
「ねえ、静先生。いいでしょう? そろそろ携帯の番号ぐらい教えてよ」
甘えるような声のトーンに、どきりとする。
赤いミュールに合わせたのだろう、鮮やかな赤いミニスカートをはいた優月ちゃんが、静さんの腕に自分の腕をからませているのが見えた。
話があると言ったら、今日は遅くまでクラスがあるから、終わる頃にそこまで来てほしいと言ってくれて。
一緒に夕食でもとろうと提案してくれた静さんの言葉に、私は少し――ううん、かなり浮かれていたのだ。
だから忘れてしまっていたのかもしれない。
それが隣町の市民会館で行われる、茶道のクラスだってことを。
ちょうどバイトが終わった八時過ぎに駅へ向かって、市民会館の前に着いたのは八時半。
指定された噴水前に腰を下ろして、私は手鏡で髪の毛をチェックしたりしていた。
そろそろ静さんが出てくる頃かなあ、なんてわくわくしながら自動ドアを見つめていた、その時。
お仕事の後に習いに来ているのだろうOLさんらしき女の人や、年配の男性、そしてご近所から来られているようなおばさまたちに混じって、ちらりと見えたのは着物姿の静さん。
もう夜だからなのか、それとも一応講師であるからなのか、いつもみたいな気楽な着方じゃなく、ちゃんと羽織と袴も付けた品のある着こなしだった。
濃い藍色の色合いが浅黒い肌によく似合っていて、とても素敵で――つい見惚れてしまいかけた瞳に映ったのは、その前に回りこんだ赤いミュールの足。
「あ……」
思わず声がもれた。
そしてようやく思い出したんだ。
優月ちゃんが言っていたのは、このクラスのことだったんだって――。
「ねえ、静先生。いいでしょう? そろそろ携帯の番号ぐらい教えてよ」
甘えるような声のトーンに、どきりとする。
赤いミュールに合わせたのだろう、鮮やかな赤いミニスカートをはいた優月ちゃんが、静さんの腕に自分の腕をからませているのが見えた。