抹茶な風に誘われて。
「いやあ、でも意外だったな。あの静が何度も電話して、家にまで行くって言うなんてさ。それってかなりあせってる証拠だと思うよ。まあ、ガラスのハートのかをるちゃん相手だから、静も余計に早く弁解しておきたいんだろうけど」

「弁解、ですか」

「うん。まあ、あたしの責任でもあるから勝手なことは言えないけど……でも静にしちゃ本当にただの事故っていうか、『キス』なんてもんでもないって思ってるだろうから気にする必要ないと思うよー?」

 驚いて目を瞠った私を見て、しばらく何か迷うようなそぶりを見せていた香織さんは、タバコの煙を全部吐き出してから決めたように続けた。

「あのさ、かをるちゃん」

「……はい?」

「こんなこと言って傷つけるかもしれないけど――静と付き合う上では避けて通れない道だと思うから、言っておくね。かをるちゃんは静が昔、ホストって仕事やってたって知ってるでしょ?」

 頷くと、テーブルの上でマニキュアを塗った爪をいじりながら、香織さんは私を見る。

 その視線に込められた意図がわからなくて、黙っていたらまた名前を呼ばれた。

「あのね、ホストなんていう人種は、客を得るためなら平気で思ってもない言葉を言うし、笑顔も見せるし、極端な話、体だって利用するわけ。その意味、わかる?」

 子供に説明するかのような口調で、はっきり、ゆっくりと言葉を並べる香織さん。

 でも最後の質問には答えられなかった。

 ふう、とため息をついて、香織さんは私を見つめた。
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