抹茶な風に誘われて。
Ep.8 かをる―誤解
有無を言わさず引っ張られていった先は裏門で、そこに待っていたのは一台の車。
車種とかほとんど詳しくない私でも知っている外国車――その助手席の扉を開けて、静さんが「乗れ」と一言。
連れて行かれる間も何も話してくれなかった彼がやっと口を開いてくれたことが嬉しくて、私は素直に乗り込んだ。
「あ、あの……静さん、運転できたんですね」
どうでもいい質問をしてしまったことはわかっていたけど、車内に漂う沈黙が怖くて声に出した。
着物の上にシートベルトをした静さんが、身を乗り出して私のベルトもしめてくれる。
「必要な時もあるからな。面倒だから車は持ってないが」
独り言のように答えてくれた言葉に納得して、一瞬後に「じゃあ、この車は――?」と訊ねたら、グレーの瞳がただ前を向いた。
「これはハナコに借りたんだ。そんなことより、聞きたいことが他にあるんじゃないのか?」
そう聞かれて思わず言葉につまる。
――優月ちゃんとのこと、電話のこと、お仕事のこと、それに……文化祭のこと。
色々な疑問が頭に回る。
どれを先に訪ねようか考え込んでいた私は、ぐうう、と情けない音を立てた自分のお腹にあわてて手をあてた。
静かな車内にその音が響いたことは確実で、一気に顔が熱くなる。
おそるおそる目線をあげたら、静さんがなんともいえない顔で私を見ていた。
「あ、あのう……お昼ごはん、食べましたか?」
つい口から出た最初の質問に、その後笑いを爆発させる静さん。
恥ずかしくて顔から火が出そうだったけれど、なぜだか二人の間に漂っていた微妙な空気が和んだのがわかる。
「いや、まだだ。先に食事だな。落ち着いて食べられる店を知ってる。そう遠くないからそこでいいか?」
魅力的な微笑に提案されたら断れるわけもなくて、私はつい頷いてしまう。
車が走り出して、学校が遠くなっていくのが見えてから、やっと我に返った。
車種とかほとんど詳しくない私でも知っている外国車――その助手席の扉を開けて、静さんが「乗れ」と一言。
連れて行かれる間も何も話してくれなかった彼がやっと口を開いてくれたことが嬉しくて、私は素直に乗り込んだ。
「あ、あの……静さん、運転できたんですね」
どうでもいい質問をしてしまったことはわかっていたけど、車内に漂う沈黙が怖くて声に出した。
着物の上にシートベルトをした静さんが、身を乗り出して私のベルトもしめてくれる。
「必要な時もあるからな。面倒だから車は持ってないが」
独り言のように答えてくれた言葉に納得して、一瞬後に「じゃあ、この車は――?」と訊ねたら、グレーの瞳がただ前を向いた。
「これはハナコに借りたんだ。そんなことより、聞きたいことが他にあるんじゃないのか?」
そう聞かれて思わず言葉につまる。
――優月ちゃんとのこと、電話のこと、お仕事のこと、それに……文化祭のこと。
色々な疑問が頭に回る。
どれを先に訪ねようか考え込んでいた私は、ぐうう、と情けない音を立てた自分のお腹にあわてて手をあてた。
静かな車内にその音が響いたことは確実で、一気に顔が熱くなる。
おそるおそる目線をあげたら、静さんがなんともいえない顔で私を見ていた。
「あ、あのう……お昼ごはん、食べましたか?」
つい口から出た最初の質問に、その後笑いを爆発させる静さん。
恥ずかしくて顔から火が出そうだったけれど、なぜだか二人の間に漂っていた微妙な空気が和んだのがわかる。
「いや、まだだ。先に食事だな。落ち着いて食べられる店を知ってる。そう遠くないからそこでいいか?」
魅力的な微笑に提案されたら断れるわけもなくて、私はつい頷いてしまう。
車が走り出して、学校が遠くなっていくのが見えてから、やっと我に返った。