抹茶な風に誘われて。
「繊細な美――まるでかをるちゃんみたいな花よね。もう一つの花言葉と一緒で、芯は強い子だからきっと大丈夫だとは思うんだけど……」

 やっぱり心配なのよね、と何度目かのため息をついてから、彼女は遠慮がちに微笑んだ。

 そして思い出したように腕時計を見て、あわてて俺にお辞儀をする。

「そろそろ戻らなきゃ。ごめんなさいね、お茶まで頂いちゃって。商店街の会合だって言って出てきちゃったから、かをるちゃん一人で頑張ってくれてるのよ」

 くるくると忙しそうに働く小柄な背中を思い描いた。

 それと同時に、その瞳に影が差しているのかと思うと心の中が暗い雲に覆われていく。

「あなたのせいだって責めるつもりで来たんじゃないから、それは理解してちょうだいね? ただ――かをるちゃんの力になってあげてほしくて」

 私じゃだめなのよ、と寂しそうに笑われて、つい瞳をそらした。

 それ以上を言わずに、来た時と同じようにバタバタと帰って行く客を見送る。

 家にいるのがもったいないくらいの晴天――けれど心に広がり始めた黒雲は、俺の瞳を知らず厳しいものにしていたのだった。

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