抹茶な風に誘われて。
「なぜ俺に言わなかった?」

 答えはもちろん読めていたが、あえて訊ねる。

 みるみる泣きそうな顔になったかをるが、あきらめたように唇を開いた。

「静さんのことが原因、とか……そんな風に思ってほしくなかったんです。だって、ただ打ち明けられなかったのは私のせいなだけで、静さんには何の責任も――」

 抱え切れなかったものがあふれ出すように、また涙がぽろぽろ流れ出す。

 たちまちしゃくりあげ始める少女をそっと胸におさめて、頭を撫でてやった。

「馬鹿そのものだな、お前は」

 冷淡に言い切ってやると、かをるは潤んだ瞳で俺を見上げる。

 わかりやすく浮かんだ不安の色をかき消してやるために、涙を指で拭って、軽く口付けた。

「俺がそんなことで気に病むような性格に見えるか? お前と一緒にするな」

 言った途端、すぐにゆがむ顔。寄り添ってくる、小さな体。

 決して言いはしないけれど、きっとひどい陰口を叩かれているんだろう。

 元々同性に敵を作りやすい外見と性格をしている上に、無垢すぎる反応で余計に相手を苛つかせているのだろうから。

 足もとに揺れる雑草さえも避けて歩くようなこの少女には、きっとわかるまい。

 ――獲物を狩るためだけではなく、身を守るためにも時には牙を剥く必要があることが。

 小さな棘を振りかざしてのさばる女を頭に浮かべながら、かをるの涙に唇をつけた。
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