抹茶な風に誘われて。
「まーまー、固いこと言うなっての。でもこれでかをるちゃんを苦しめる性悪女に正義の鉄拳を食らわしてやれるわけだよなあ。あーマジ、スッキリするー!」

 ふざけた口調で伸びをする駄目元だが、本心では結構心配してくれていたことは知っていた。

 二個目の栗きんとんを味わう馬鹿面を笑いながら、販売機で買った緑茶を差し出してやる。

「抹茶とは比べられんが、ないよりはマシだろう」

 ぶっきらぼうに手渡した俺に、大げさなくらい驚いた顔をした駄目元は、

「ほえー、静が優しいなんて気色悪い! やっぱかをるちゃん効果!? すんげーな、さすがマイナスイオン!」などとわけのわからない独り言で興奮している。

「このまま、手加減してやれとか言うんじゃねえ? あの性悪女にさー」

 明らかに面白がっている表情で、後ろから訊ねる瞳に笑みを返した。

 暮れ行きつつある夜の街に向かいながら、これから始まるパーティーの結末を思い描く。

「冗談じゃない。一条静をなめてかかればどういうことになるか、野良猫に十分思い知らせてやるさ」

 細めた瞳に宿る光は、さながら虎か黒ヒョウか――ハナコあたりなら、そう言って騒ぎそうだと俺は思った。
 
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