抹茶な風に誘われて。
「お前ら、仕事はどうした、仕事は! 平日の真っ昼間からピーチクパーチク囀りやがって――井戸端会議なら、外でやってこい!」

 畳の上に転がった駄目元が痛そうにわめくが、続いて落ちた俺の雷にあわてて起き上がり、すばやく逃げたハナコと香織を追いかけていく。

 かをるに事の真相を知られることは構わないが、それがあの三人の軽すぎる口によるものでなければいいと、ひそかに願う。

 ――やはり、人選は失敗だったかな。

 協力を要請せざるを得なかった三人の性格を思うと、軽く後悔する。

 だが、そんな心配など微小な問題でしかなかったことを知ったのは、かをるからの電話だった。

「――なんだ、まだ何か用か」

 やっと静かに戻った書斎で英文をタイプしていたところに鳴った携帯を、表示も見ずに取った俺は、予想外の声に手を止めた。

「いや、てっきりハナコたちの誰かかと思って……」と不機嫌だった理由を説明しかけた時、かをるの様子がおかしいことに気づく。

「どうした、何かあったのか?」

 問いかけても、すすり泣くばかりで答えない。

 涙声の合間にただ俺の名を呼ぶかをるは、ひどく混乱しているようだった。

「待っていろ、今すぐ行くから――!」

 途中だった仕事を放り出して、思わずそう告げていた。
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