抹茶な風に誘われて。
「こっ、これは――みっ、見回り! そうだ、生徒たちを非行から守るために巡回していたんだ! 断じて私たちはそんな――」

「そっ、そうですよ! 大体、こんな隠し撮りまでして、教師を脅迫しようだなんてけしからん! やっぱりホストなんて類の人間がやることには品がない!」

 既にあきれ返った顔つきで、机に頬杖をついている藤田葉子の手前なのか、それとも単なる腹立たしさからなのか、教師たちが叫ぶ。

 次なる手に移ろうとしていた俺よりも早く立ち上がったのは、それまで黙っていたかをるだった。

「そ、そんな風に悪く言わないでください! 静さんはそんな人じゃ――ホストという職業に就いていたからって、変な目で見るのはやめてください!」

 震える両手を机について、今にもこぼれ落ちそうな涙をためた瞳で、教師たちを睨みつける。

「かをるちゃん――」と隣で呟かれ、我に返ったように頭を下げた。

「ご、ごめんなさい……先生たちに怒鳴ったりしてしまって。でも、本当に静さんは――!」

 青ざめた顔で、それでも俺をかばおうとするかをる。

 小さな頭をポンと叩いて、俺は笑った。

「俺のことは心配するな、そう言っただろうが」

 そう言葉をかけてから、かをるの体をさりげなく背中に隠す。

 今から取り出す決定打は、とりあえず彼女の目には触れないようにしたほうがいいと思ったからだった。

「巡回か、なら仕方がない。それなら、これにはどういう説明を付けていただけるでしょう? ホストなどという低レベルの職業についていた、頭の悪い私にもよくわかるように、はっきりと聞かせていただきたいものだ」

 瞳に刃を閃かせて、俺が取り出して見せたもの――それもまた、一枚の写真。

 見間違えようもないホテルの一室で、身を寄せ合う裸の男女がおさめられたもの。

 ちなみに、女のほうは複数。男は今目の前にいる学年主任よりも更に太った、脂ぎった顔の人物だ。

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