抹茶な風に誘われて。
「許してくれるなら……こんな私でもいいと思ってくれるなら、もう一度友達になってください、優月ちゃん。私――いつも明るくて、みんなの中心で笑って、内気な私を引っ張っていってくれる優月ちゃんのこと、本当に大事なお友達だと思ってる。本当だよ」

 指にきらりと光る指輪をはめたまま、俺からしたら馬鹿そのものだとあきれ返る言葉を告げる少女。

 青春ドラマなら感動などするはずもない、陳腐な台詞だが、この世にも珍しい女は本気で言っているのだ。

 今時小学生でも持ち合わせていない、透明に透き通った、曇りのない本音。

 だからこそ、胸に響く。突き刺さる。

 まるで自らの汚れた心を照らす、まぶしすぎる太陽のように――。

「も、もうやだ、この子……マジで言ってんの、そんなのあり得ないから……っ」

 笑おうとした優月の試みは見事に失敗に終わって、今度こそ号泣し始めた彼女を二人の親友が抱きしめる。

 呆然とした顔で廊下の端からその光景を眺める香織と、楽しそうに野次馬根性丸出しの駄目元。

 今はそっとしてやるべきか、と呆れ半分、俺も茶室へ引っ込みかけたその横で、ハナコだけがハンカチ片手にもらい涙を流していた。

「いいわあっ、友情! 青春! 素敵ねえっ! ねえっ? 静ちゃん? 静ちゃんったらあ」

 小指を立てて大声を上げるハナコを強引に引っ張りながら、俺はいつしか笑っていたのだった。
 
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