抹茶な風に誘われて。
「コラコラ、優月! またかをるちゃんいじめてからかってるでしょ? あんたと違って、かをるちゃんはピュアなんだから、本気で悩んじゃうんだからねっ! それに気が多いのもいい加減にしときな。ちゃんと本気の恋するってあれから約束したでしょーが!」

「はいはーい、わかってるからそんなコワイ顔しないでよ。でももったいないのは本当なんだもーん。だってさ、この二ヶ月で五人目だよ? 事情を知らない他校の生徒はまだしも、かをるちゃんがもう売約済みだって知ってるのに告ってくるうちの生徒まで出てきてるじゃん。もともと守ってあげたくなる華奢で可愛い外見してる上に、色気までほんのり出てきちゃったら、そらー男どもがほっとかないでしょ。これってもう、危機的状況だよねえ」

「危機的状況……?」

 よくわからない言葉に首を傾げた私を、にやにやと見つめてくる優月ちゃん。

 まだ赤い頬を自分で押さえていたところを、手にした下敷きで扇いでくる。

「そりゃあもう、静先生にとって、に決まってんじゃない! 自分のカノジョ、いや婚約者がモテモテってのは見過ごすわけにはいかない状況だよお? あたし、ちくっちゃおうかなー?」

「だっ、だめ! お願いだからやめて、優月ちゃん」

「なんでなんでー? あの飄々としたポーカーフェイスの影で、静先生結構独占欲強そうだし、この事実を知ったらどんな顔するか見物だって! ねっ? 咲」

「う、うーん……そりゃあちょっと見たいような気も……ってだめだよ、二人の仲を邪魔するようなことしちゃ」

「えーっ、これくらいで邪魔にはなんないでしょー? っていうか、恋にはスパイスってもんが必要なんだって。こういうドキドキハラハラがあるから、マンネリ化しないんだってば。ねえ? かをるちゃん」

 段々理解のできない話に移り変わっていくのを、途方にくれて見守っていた私は、突然話題をふられてきょとんとしてしまう。


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