抹茶な風に誘われて。
「あ、あの……もう一つの授業って……?」

 一瞬持ってきた英語の教科書を思い浮かべた私の考えは、軽く笑った静さんの目つきで否定されたことがわかる。

 ――や、やっぱり……こういう、展開だよね。

 心の中で得た結論は、今までの記憶をフラッシュバックのように閃かせる。

 熱い手の平、優しい唇、少し荒い息遣い。

 それは何度経験しても慣れることのできない、不思議な時間で。

 ドキドキして、恥ずかしさに耐えられなくて、もうやめてほしいとさえ懇願したくなるのに、なぜか言葉にできなくて――。

 進むたびに、まるで中毒になったかのように拒めなくなっていく自分がいる。

 どさり、と畳の上に押し倒されて、広がった髪に口付けられた時には、もう体中が熱かった。

 緊張して逃げたくなるのに、体に感じる静さんの重みと熱さが心地いいとまで思えて、自分で自分がわからなかった。

「かをる……」

 耳元で名を呼ばれて、セーラー服をたくしあげられる。

 すっと差し入れられた手の平が、高まる鼓動ごと胸を包み込む。

 ゆっくりと降りてきた唇が、強く、優しく何度も吸い付いてきて――ついに声を上げてしまう。

 ――だ、だめ……! 恥ずかしいから、抑えてなきゃ。

 そう思う理性とは裏腹に、静さんが与える刺激に耐えられないで、もれる声。

 自分がこんな風になるなんて……いや、付き合うということにこんなにも恥ずかしい時間が含まれるなんて、全く知らなかった。
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