抹茶な風に誘われて。
 本当は今すぐやめてほしい。でも言えない。

 そんな葛藤なんてお見通しなのか、それとも気にしないのか、静さんは唇と手、指先の一本一本で私を追いつめていくのだ。

 ついにスカートの中に入ってきた指に、思わず膝を合わせるけれど、優しいキスで声を上げることすら許されない。

「せ、静さ……だめ……っ」

 心の準備が追いつかないまま、初めて下着に触れられて、やっとのことで言葉を発した。

 本当の恋人になるってことは、この未知の感覚にも耐えなきゃいけないってことなんだって、それぐらいわかってる。

 でも、怖くて恥ずかしくて、不安で――やっぱりあふれてきた涙は堪えることができなかった。

「……ひっ……うっ……」

 抑えてももれてしまった嗚咽で、顔を上げた静さんが深く息を吐いた。

 ゆっくり体を起こして、自分の乱れた着物よりも先に、私のスカートを直してくれる。

 泣き出してしまった私の頭を軽く撫でて、そのまま優しく大きな胸に引き寄せた。

「ご、ごめんなさ……私」

「――いいよ。無理強いはしないって言っただろう。お前が怖くなくなるまで、ちゃんと待つから」

 優しい、優しいグレーの瞳に見つめられて、返す言葉も思いつかない。

 ただ恥ずかしくて、申し訳なくて、いつまでも泣き続ける私を、静さんはずっと抱きしめてくれていた。
 
< 227 / 360 >

この作品をシェア

pagetop