抹茶な風に誘われて。
「あ、そろそろバイトの時間ですよね。今、降りますから」

 きっと呼びに来たんだろうと思った私が言うと、「いや、それもあるけど、違うんだよ」とおじさん。

 ジーンズの後ろのポケットから取り出したものを、私に差し出してくれる。

「はがき……? あ、これ、園の先生からですね」

 いつもどおり私が出した近況報告への返事だろうと何気なく受け取ってから、もう一枚白い封筒が重なっているのがわかった。

 ずらしてみると、エアメールのスタンプが見える。

「海外から、私に――?」

 呟いて見つけた名前に、思わず目を見開いた。

「かをるちゃん、お友達? 海外に行った子もいたの?」

「あ、ああ、はい……まあ」

 なんとなくにごして、曖昧に笑った私を葉子さんが首を傾げながら見ていたけれど、混乱した頭では、それ以上の言葉は思いつかなかった。

 その手紙が、この後とんでもない事態を巻き起こすことになるなんて、この時の私にはまるで想像できないことだったのだ――。


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