抹茶な風に誘われて。
Ep.2 再会
『かをるちゃん、久しぶりだね。僕のことを覚えているだろうか。あの時、君を連れて行けなかったことをずっと後悔していたのだ、なんて今更言っても、信じてはもらえないだろうね』
そんな冒頭部分から読んでいくうちに、いつしか便箋を持つ手が震えていた。
幼い日の心の傷が、えぐられるように姿を現す。
そして蘇ってくる色々な場面で最後に残るのは、優しい微笑。
背の高いその人に、満面の笑みを送るのは、小さな自分。
どうして――何度も責めた言葉をまるで知っているかのような謝罪は驚愕と共に胸に染み渡り、それ以上読み進めることができなかった。
*
十月半ば、ちょうどやってきた中間考査で数日はバイトがお休みになった。
それと同時に静さんも本業の翻訳やそれ以外の茶道のお仕事も入ったりして、忙しくなって――しばらく会えないことがわかった。
がっかりする気持ちと一緒に、なぜかほっとしている自分もいて、複雑な気分になる。
例の手紙のこともあったけれど、それよりも本心で実はずっと悩んでいたこと――誰にも言えない不安が、とりあえずは先延ばしにされたことに安心してしまったのかもしれなかった。
「どうかしたの? かをるちゃん」
一緒に勉強していた咲ちゃんに小声で聞かれて、教科書を開いたままぼうっとしていたことに気づく。
明日のテストは英語と数学、どちらも私は苦手としているものなんだけど――手が進んでいなかったのは、それだけが理由じゃない。
そんな冒頭部分から読んでいくうちに、いつしか便箋を持つ手が震えていた。
幼い日の心の傷が、えぐられるように姿を現す。
そして蘇ってくる色々な場面で最後に残るのは、優しい微笑。
背の高いその人に、満面の笑みを送るのは、小さな自分。
どうして――何度も責めた言葉をまるで知っているかのような謝罪は驚愕と共に胸に染み渡り、それ以上読み進めることができなかった。
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十月半ば、ちょうどやってきた中間考査で数日はバイトがお休みになった。
それと同時に静さんも本業の翻訳やそれ以外の茶道のお仕事も入ったりして、忙しくなって――しばらく会えないことがわかった。
がっかりする気持ちと一緒に、なぜかほっとしている自分もいて、複雑な気分になる。
例の手紙のこともあったけれど、それよりも本心で実はずっと悩んでいたこと――誰にも言えない不安が、とりあえずは先延ばしにされたことに安心してしまったのかもしれなかった。
「どうかしたの? かをるちゃん」
一緒に勉強していた咲ちゃんに小声で聞かれて、教科書を開いたままぼうっとしていたことに気づく。
明日のテストは英語と数学、どちらも私は苦手としているものなんだけど――手が進んでいなかったのは、それだけが理由じゃない。