抹茶な風に誘われて。
「どっかにいい男いないー? あ、花屋のお客にイケメンとかいたら紹介してよー!」

「ええー? お店ではお花のことしか気にしてないから、よくわかんないなあ……」

 あまりお客さんの顔を覚えるのも得意ではないから、正直に言ったのだけれど、優月ちゃんは唇をとがらせて不満そうな顔になる。

「一人くらいいるでしょ? カワイイ女子高生が彼氏募集中ですーって宣伝しといて? ねっ?」

「うーん……そ、そうだね。あ、そうだ! 亀元さんは? 亀元さんもいつも彼女募集中だって」

「はあー!? 絶対無理! だってあいつホストじゃーん。しかも静さんみたいに元でもナンバーワンとかならまだいいけどさ、万年最下位でしょお? マジ勘弁してって感じ」

「そ、そう……?」

 なんとなく二人の喋り方も雰囲気も似通ったものがあるから、もしかしたらうまくいくのではと思ったのは、どうやらまた私の勘違いだったらしい。

 自分のこともよくわからないのに、他の人の恋を応援するなんてやっぱり難しいのかも、なんて思っていたら、突然優月ちゃんが間近で覗き込んできた。

 綺麗に塗られたマスカラが間近で見える。

「なっ、何? 優月ちゃん?」

「うーん……やっぱなーんか元気ないでしょ? 静先生とケンカでもしたあ? それともまた一人でなんか不安がってるとか!」

 時々相談に乗っているから、私の思考パターンがわかってきたのだと優月ちゃんが続ける。

「自分じゃ静先生にふさわしくないんじゃないか、とか、それとも何だ、今更年齢差が気になってきたとか……あっ、わかった! どんどん進んでく関係に不安が抑えきれない、とか!」

 図星であることは顔に書いていたらしく、「やっぱりね!」となぜか優月ちゃんが勝ち誇ったような顔をした。

 それから笑顔を収めて、真顔になる。

「……ぶっちゃけ、この前言ってたアレのことだ。ね? 当たりでしょ?」

 真っ赤になる頬を押さえて、それでも頷いた私の肩を抱いた優月ちゃんが一人、うんうん、と頷く。
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